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東京地方裁判所 平成11年(ワ)18394号 判決 2000年6月27日

原告

有馬公哉

被告

二見竜

主文

一  被告は、原告に対し、五六六万八一四〇円及びうち金二九一万六四六一円に対する平成八年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、原告の勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告に対し、一六五九万五四三三円及びうち金一三八四万三七五四円に対する平成八年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、後記の交通事故によって死亡した訴外亡有馬泉(以下、「訴外人」という。)の相続人である子が、被告に対して、訴外人の死亡による損害の賠償を求めている事案である。

一  前提となる事実

1  交通事故(以下、「本件事故」という。)の発生

(一) 発生日時 平成八年二月二二日午後七時三分ころ

(二) 事故現場 鹿児島市下竜尾町三番二八号先路上(甲第三号証、以下、「本件事故現場」という。)

(三) 加害者 軽四輪貨物自動車(鹿児島四一そ八〇九一、甲第一〇号証、以下、「加害車両」という。)を運転していた被告

(四) 被害者 道路横断中の訴外人

(五) 事故態様 被告が加害車両を運転して本件現場付近を走行中、前方注視を怠ったため、前方道路横断中の歩行者である訴外人の発見が遅れて、加害車両を訴外人に衝突させた。

(六) 結果 本件事故により、訴外人は頭蓋骨骨折等の傷害を負って死亡した。

2  責任原因

被告は、自己の所有する車両を運転していた際に、前方不注視により本件事故を惹起したものであるから、民法七〇九条、自賠法三条により、訴外人及び原告の損害を賠償すべき責任がある。

3  相続

原告は訴外人の子であり、唯一の相続人として訴外人の損害賠償請求権を取得した。

二  原告の請求する損害額

1  訴外人の逸失利益 二一五二万四七〇三円

退職年金三四七万七一〇〇円及び通算老齢年金一四万七一〇〇円の合計三六二万四二〇〇円を基礎収入とし、生活費控除四割、平均余命一四年のライプニッツ係数九・八九八六を用いて現価を求めると、二一五二万四七〇三円となる。

2  訴外人の慰謝料 一一〇〇万円

3  原告の損害

(一) 医療費 五一七〇円

(二) 葬儀費 一七〇万四一五五円

(三) 原告固有の慰謝料 一一〇〇万円

4  過失相殺

訴外人が横断した道路(以下、「本件道路」という。)は、幅員一二メートルの直線道路で、道路両脇には街灯やバス停の明かり、さらには商店の明かりなどがあって明るく見通しはよい。訴外人が本件道路を横断する際の安全確認を怠った点で、一五パーセントの過失相殺をすると、原告が被告に請求できる金額は三八四四万八九二四円となる(小数点以下切り上げ)。

5  損害のてん補

自賠責保険から、医療費五一七〇円、死亡による損害賠償として二六一〇万円の合計二六一〇万五一七〇円のてん補を受けた。

6  遅延損害金

原告は、右のとおり二六一〇万五一七〇円の損害の賠償を受けたが、これに対する事故日である平成八年二月二二日から自賠責保険金の最初の支払期日である平成一〇年四月六日まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である二七五万一六七九円を請求する。

7  弁護士費用 一五〇万円

8  本訴における請求額

したがって、本訴において原告が請求する額は、一六五九万五四三三円及び右金額から遅延損害金分を差し引いた残額一三八四万三七五四円に対する事故日である平成八年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払いを求める。

三  争点

1  過失相殺

被告は、本件道路は、片側二車線の交通頻繁な幹線道路であり、訴外人の横断は幹線道路の横断に該当するから、過失相殺の割合は三〇パーセントとするのが相当であると主張している。

2  各損害額

第三当裁判所の判断

一  争点1(過失相殺)について

1  甲第一ないし第一六号証によれば、以下の事実が認められる。

本件道路は、幅員約一二メートルの片側二車線の歩車道の区別のある道路であり、本件事故現場付近は直線で、道路両側には街灯、バス停の明かり及び商店の明かりなどがあって明るく、事故直後に行われた実況見分によっても約六〇メートルの見通しが得られる状況である。また、本件事故現場は、近くの信号機の設置された横断歩道から約二五・八メートルの地点であり、概ね商店街と評価して差し支えなく、車両の交通量は多いが、歩行者はバス停からの乗降客程度で少ない(主として甲第六号証)。

2  訴外人は、事故当時七三歳の女性であるところ、前記のとおりの見通し状況の中で、加害車両が接近中であったにもかかわらず横断を開始して事故に遭遇したものであるから、横断に際しての道路左右の安全を確認しないままに横断を開始したものと推認され(被告は、本件事故当時、加害車両を時速約三〇キロメートルで走行させていたと供述しており、これに特に反する証拠はない。)、過失相殺されるべき事情は認められる。

3  そこで、過失相殺の割合について検討するに、前記の諸要素(特に、商店街における横断歩道外の横断で、歩行者が比較的高齢であること、夜間であること等)を考慮すれば、過失相殺率は、原告主張のとおり一五パーセントとするのが相当である。

被告は、本件道路が幹線道路に該当すると主張している。幹線道路と言えるためには、道路の幅員が概ね一四メートル以上で、車が高速で走行し、通行量の多い道路であることが必要だが、本件道路は、幅員の点及び商店街であり、最高速度が時速四〇キロメートルとされている(甲第六号証)ことから必ずしも車が高速で走行するとは認めがたく、したがって、幹線道路と評価することはできない。

二  争点2(各損害額)について

各損害ごとに冒頭に当裁判所の認定額を記載し、括弧内には原告の請求金額を記載する。

1  訴外人の逸失利益 一四三四万九八〇二円(二一五二万四七〇三円)

訴外人が、退職共済年金として年間三四七万七一〇〇円、老齢厚生年金として年間一四万七一〇〇円の合計年間三六二万四二〇〇円を受領できたことは、当事者間に争いはない。

右年金は、性質上訴外人の生存中は受領できるのであるから、平成八年当時の訴外人の平均余命である一四年間は継続して受領できる一方、年金が主として年金生活者の生活を維持するために給付されるものであることを考慮すると、生活費控除割合は六〇パーセントとするのが相当である。

したがって、年五パーセントのライプニッツ係数を用いて中間利息を控除すると、次の計算式により、一四三四万九八〇二円となる。

三六二万四二〇〇円×(一-〇・六)×九・八九八六=一四三四万九八〇二円(小数点以下は切り捨て。)

2  慰謝料 一八〇〇万円(二二〇〇万円)

原告は、訴外人の慰謝料及び原告自身の慰謝料として合計二二〇〇万円を請求している。

訴外人は本件事故により死亡したもので、訴外人自身は言うに及ばず、子供である原告も大きな精神的衝撃を受けたであろうことは容易に推察できる。

訴外人は、本件事故当時七三歳の女性であり、原告とは離れて一人で生活をし、経済的にも自立していたものと思料されるから、これらの諸事情を総合考慮すると、慰謝料は、訴外人及び原告固有のものを合計して、一八〇〇円とするのが相当である。

3  治療費 五八〇〇円

治療費については、原告は五一七〇円とし、被告は八八九〇円としているが、これがすでに支払われていることは当事者間に争いがない。

甲第二七号証の一、二によれば、自賠責死亡保険金として争いのない二六一〇万円のほかに、五八〇〇円が支払われているものと認められるから、治療費は五八〇〇円と認めることができる。

4  葬儀費用 一二〇万円(一七〇万四一五五円)

訴外人の葬儀費用として、原告が被告に請求できる金額は一二〇万円とするのが相当である。

5  以上の損害小計 三三五五万五六〇二円

6  過失相殺 相殺後の金額 二八五二万二二六一円

前述のとおり、本件については、一五パーセントの過失相殺をするのが相当であり、前記損害費目はすべて過失相殺の対象となるものである。

過失相殺後の金額は、二八五二万二二六一円となる。

7  損害のてん補

本件損害のうち、既に二六一〇万五八〇〇円が原告側に支払われてん補されている(甲第二七号証の一、二)ので、これを前記の金額から控除すると、残額は二四一万六四六一円となる。

8  確定遅延損害金 二七五万一六七九円

原告は、自賠責保険からの保険金を都合二回にわたり受領した(合計金額は前記のとおり。)が、最初に受領したのは平成一〇年四月六日である。

したがって、少なくとも前記保険金に相当する損害額に対する本件事故の発生日である平成八年二月二二日から右最初の支払日である平成一〇年四月六日までの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めることができ、その額は原告主張の金額を上回るから、原告主張の金額を認めることができる。

9  以上の合計 五一六万八一四〇円

10  弁護士費用 五〇万円

原告が原告代理人に対して本件訴訟の提起、追行を依頼したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、本件事案の内容、認容額及び審理経過に照らし、被告に請求できる弁護士費用としては、五〇万円が相当と認める。

11  結論

以上により、五六六万八一四〇円及びこれから確定遅延損害金分を控除した二九一万六四六一円に対する本件事故日である平成八年二月二二日から完済に至るまでの年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 村山浩昭)

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